2013年04月06日

一桶花屋さんのすすめ。

 去年のお彼岸もボヤいたけど、直売所の近所のおばあさんたちが担ってきたお花コーナーの面白さが失われつつある問題。お花がないわけではないんよ。あるけど、仕入れのお花がここ数年どんどん増えてきた。多くの直売所でそうみたい。

 これにはいろんな事情がある。最初に書いたおばあさんたちの高齢化もそうやけど、お店はお花を常に欲しい。お花は農産物直売所の顔やきんな。お花コーナーが入り口近くにあることが多いよ。これは水の入ったお花の桶が重いということもあるのかもしれないけど。この前視察したここではそういったお花の機能を非常に意識した店作りをしとったな。ところがお花って産地でもない限り、地場産にこだわるとあんまり揃わんのな。菊なんかが典型で、春先には沖縄とか台湾とかのぬくいところでないとでけんきん、そういうのを仕入れて組花を作って売るフリーのお花屋さんが活躍する。そんなわけで仕入れの花も必要なんよ。店の顔が寂しいと暗くなるきんな。…なんやけど、それではお花屋さんに場貸ししとるだけになってしもうて直売所らしさはないよな。

 田舎の農家のおばあちゃんたちはたいてい畑の隅で菊やストックやキンセンカや菜の花なんかを作っとって、お墓さん用のお花を自分で育てて組んみょった。その延長に直売所のお花コーナーがあったんな、当初は。その頃よりお花コーナーは量的には賑やかになったけど、おばあちゃんたちのオリジナルな組花が少なくなったのは寂しいな。そんでなんやけど…

 ちょっとちょっと、若い奥さんたち、お花やらんな?そこのお嬢さん(みのもんた風)、あんたもやで。田舎では後期高齢者以外は全員若い人やきんな。お花楽しいよ。ようけやるとえらいきんな、一日一桶くらい、「一桶花屋さん」はどうやろうか。

 お花のなにが楽しいか。菜園の面白さと手芸の面白さが両方楽しめる。畑でお花を作ってそれを摘んできて自分の好きなように組む。フラワーアレンジメントっていうんかな。そこまでたいそうなもんでなくても、お墓さんにまつれるように、あるいは食卓の真ん中を彩れるように。もちろん組まずに一種類だけで束にしてもええんやけどな。

 お花のなにが畑にええか。もし野菜だけを作っりょるとしような。たいてい夏はウリ科(キュウリとかカボチャとかスイカとかな)、ナス科(ナス、トマト、ピーマンな)が多くなる。そこにキク科のキクやアスターが入れば畑の多様性が増して、そこにおる昆虫や微生物なんかの生き物の多様性も増す。そしたら病害虫が多発生するリスクを減らすことがでける(とは言えいろんなもん作るんはまんどくさいといえばまんどくさいんやけどな)。

 お花のなにが気が楽か。最近野菜に関しては食の安心安全がダイレクトに絡んで、家庭菜園に関しても本屋にもインターネットにもいろんな情報が溢れとるよな。農薬キケン!じゃあ木酢液を使いましょう。実はそれ農薬よりキケン!とか。有機肥料がいいんでしょ?え、無肥料自然農?肥毒ってなにそれ?肥料って毒なの?F1の品種食ってたら病気になるの?みたいな。ここでそういう言説の一応現時点で正しかろう答えを書くこともできるんやけど、一度不安になってしまった人はなかなか不安から抜け出すことができんのな。それをええことにセコイ商売したり支配欲を満たそうとする人たちもおる。そういう悲しいことは特にこの2年間嫌になるほど見てきた。お花栽培やったらその辺の気になるあれこれを野菜ほどあんまり気にせんで済むのかなと。口に入れるわけでないきんな。

 ただ、お花の背を伸ばそうと思ったらちゃんと肥料はやらないかんで。でも本職のお花農家ほどは伸ばさんでええのがまた気が楽。本職さんはお花を長~く作って畑で切って市場に出して、花屋さんがそれを買ってまた切って使うんやけど、自分で育てて売るんやったらそんなに長さはいらん。肥料が切れて下葉が枯れても自分で毟れば無問題。ただ、品質が落ちるのはふせがんとな。程度問題やけど、安かろう悪かろうはやっぱり直売所にとってもよくない。ようけ作るわけではないきん、虫や病気ががいに発生してじょんならんということはあんまりないやろうけど、必要ならそれなりに防除もせなならん。

 そんでもってお花のなにが一番うれしいか。それは最初にリンクを張った記事にも書いたけど、朝の搬入や夕方の回収んときに同じ一桶花屋さんたちと見せあいっこしたり、お互いに余ってるものがあれば交換するんがにぎやかでうれしい。もちろんお金になるのもうれしいけど(お花は一般に野菜より単価がええきんな)、そういうにぎやかなおしゃべりがなによりええんやが。

 一桶花屋さんというのは「一箱古本市」に触発されて思いついた名称やけど、一箱古本市の楽しさを田舎でも毎日楽しむことができるんや。これはええと思うんやけど、どうやろか、そこの若い奥さん!

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この記事へのコメント
確かに、お野菜も色々と無農薬でする方法はないかと常に考えている状況だけども、考えるだけで、実は本当に本当に疲れるんですよね。

そう考えるとお花って、結構気が楽なんですね。

時には種が落ちて広がる事もありそうだし。

実は最近、就職活動もせず一人でいたらストレスであごがなり痛くて口が開かなかったんです。

今度、夢ハウス覗いてみよう♪

農業って淋しい職業だというイメージが強いのですが、案外と楽しそうですね。
Posted by 若い?奥さん・・・ at 2013年04月18日 21:06
777件目のコメントありがとうございます。なんかええことありますよ。

病害虫を防ぐためのいろんな方法はありますけど、農薬を含めてどれも決定的ではないんですよね。どれもなにかしらトレードオフにさらされます。いろんな方法の組み合わせを気楽に、それこそお花から実践してみると楽しくなってくる…かも。

そういうのをみんなで情報交換するのもまた楽しです。
Posted by kazuzokazuzo at 2013年04月19日 11:45
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