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Posted by あしたさぬき.JP at

2014年11月30日

小さい、強い、そして自由!



 久松達央さんの新著(左)をご恵投いただきました(一度ゆってみたかった)。去年出た『キレイゴトぬきの農業論』(右)は新著を読み終わったあと買って読みました。

 久松さんのお名前を知ったのは震災後の松永和紀さんの文章でやったと記憶しとるんやけど、あ、手元にあるこの本のp201以下にも登場されてるなあ。





 わしみたいないわゆる慣行農法の農家にとって久松さんは、70年代のナンチャッテ文明論とカビの生えたリスク観で消費者を脅しあげながら野菜を売るような従来の有機農家とは一線を画する、美味しさで勝負する新しい有機の農家さんっていうイメージやったんや。従来の有機農業のことは「有機農業3つの神話」として著書でも採り上げられとるなあ。ついでに慣行屋のわしから付け加えると「農薬も化学肥料も使う慣行だから収量が穫れる」も慣行農業の神話と言えるかもしらん。ざっくりとしたこと言うと結局は上手い下手やし、トンデモは別として、有機と慣行は二項対立なんかじゃなくて、無限のグラデーションがある。有機JASっていう規格はあるけどな。「シェアさせていただきます」が欲しいFacebook芸者は二項対立煽っておけばええんやろうけど、そんなもんはどうでもええ。

 そんなわけで、少量多品目の小さくて強い農業を作るためのロジックとロジックに収まらないなにか、がこの二冊には詰め込まれていて、それは慣行屋にもとてもとても参考になるし、膝を打つことが多いんな。わしみたいな売上の半分を直売所で上げるような慣行屋だけでなしに。ちょっと以下自分の話になるんやけど。

 香川県は生産高4位のブロッコリーの産地。この狭い県やのにな。ブロッコリーは典型的な土地利用型の露地野菜なんやけど、うちんとこの地区のブロ屋一軒あたりの作付面積はナンボやと思いますか?

 はい答え。50a。

 他産地ではありえん数字とちゃうやろか。この辺は基盤整備全然されてない、細分化された水田転作畑ばっかりやきんなあ。そんな土地で、昭和ヒト桁、戦中生まれ世代が無理のない面積を丁寧に作って、JAが早くから氷詰め輸送して丁寧に売って、おかげさまで消費地では他県産より1玉50円くらい高い値段で売られていることが多いと聞く。今の安値でもどうにか商売になっりょる。ありがたいこっちゃなあ。ところがそんな「ちょっといいコモディティ」を作った世代は今どんどん引退しよる。基盤整備ができとる地区ではそれに代わって大きな法人が参入しよる。「ちょっといいコモディティ」っていう地味~な地域資源を守って、これで飯食っていくっていうのがわしの小さくて強い農業。小さいいうても50aではさすがに食うていけんきん、クオリティを維持しながら技術や段取りでもうちょっと面積をこなさないかん。

 うちは今年120aの面積でブロッコリーをやっりょるんやけど、植え付ける品種は9品種、13作型。それを大きさカタチもバラバラの13枚の畑に割り振って10月から翌4月まで採る。周辺環境も含めた畑の個性と品種の個性のマッチングを過去の記録と土壌診断を元にやって、細分化された品種に、細分化された畑だからこそでけるオンデマンドな管理を段取りよく…でけたらええんやけど、段取り苦手。勉強させてもらいます。去年挫折した圃場生産管理ソフトを冬のうちに再挑戦するモチベーションももろた。

 巻末ブックガイドがついている本はそれだけで大好物なんやけど、そこはいい意味で期待を裏切られたというか。農業書や食に関する本がズラーっと並ぶかと思えば、もっともっと広いジャンルの本が本文に即して並んどる。慣行屋のわしですけど、予防接種は2冊受けましたよ、ええ。


 ところで、わしは去年の春にこんなことをツイートした。




 
 
 そんでこれをただ一人RTしてくれたのは編集者の柳瀬徹さんなんやけど、ひょっとしてこの『小さくて強い農業をつくる』はわしのこのツイートに対する回答なんやろうか…いやこれはちょっと自意識過剰が過ぎたかな。柳瀬さん、RT芸人やしな…。本、送っていただきありがとうございました。ああ、あと、山下さん、宇根さんの両大先輩のことは大変尊敬しておりますですはい。


 さあ明日からも、仕事しながらスピーカーでフリー・ジャズ鳴らして、仕事中おもむろにスマホを取り出して競輪中継を観る自由のために畑と向きあおう。






  


Posted by kazuzo at 22:49Comments(0)雑記

2014年11月14日

神々の誤発注

 ブロッコリー取っりょる。

 ああ、前回更新は植え付け前やったなあ。ちょっと間で乾燥きつくてアブラムシがわいたりしたけど、順調すぎるほど順調に生育して10月の20日過ぎから収穫開始。




 採り始めなんかは生育良すぎて、農協の出荷箱に入らんやつなんかもあるんな。そういうのは直売所のお客さんに買うてもらうんやけどな。



 シールは仮。「まあごりっぱ」ブランド。ええと思わん?茎が太くて、カ…花蕾も盛り上がっとって。そしてちゃんと硬い。香川県産ブロッコリーの規格は統一してちょっとでかい。それでも箱に入らんのがでける。でかい玉をきっちり作るためにはそりゃもちろん窒素を効かさいかんのやけど、窒素を受け止めるだけの骨格がいる。そうでないと細菌病や生理障害がでるきんな。生育後半にちゃんとカルシウムとホウ素を効かせること。それができてこその「まあごりっぱ」である。「まあごりっぱ」の旬は1月2月やな。茎が最高に太うなってしゃぶりつきたくなるほどに甘い(皮むいてしゃぶってな)。

 「まあごりっぱ」協議会では生産者を募集しています。みなで一緒に成城石井やいかりスーパーの店頭でマダムにご試食いただこうで!スルフォラファン?言いにくい。辛気臭い。そんなことよりもやな、アホやなーと食卓で、レストランで笑うてもらいたいわけよ。

 ところで、秋冬ブロッコリー産地は生育順調、夏秋ブロッコリー産地も暖かくてダラダラ収穫でけてて、大バッティング。今すごく安いなあ、ブロッコリー。昨日からの寒波でさすがに高原ものは終わりそうやけど。市場価格にして普段のこの時期の3割くらい安い。円安とかむこうの不作とかもあってアメリカ産より安いきん、この時期に上物の香川県産ブロッコリーが県内スーパーで並っびょる。うれしいけど複雑やなあ。

 こればっかりはお天道さまのやることやきん、どもならん。言うならば天の誤発注やな。世の中誤発注はSNSで広めればさばけるそうやが。これも誤発注やきん、みんな精出して食べてつかよ~。中二病っぽく「神々の誤発注」ということでどうや。  


Posted by kazuzo at 19:38Comments(0)野菜