2013年02月05日
「清浄野菜」余話
最近やたらぬくい日があったり雨が降ったりして、ブロッコリーがようけ採れるようになってきた。3番手品種の収穫がほぼ終わって、遅れていた2番手を収穫中。4番手ももうすぐ収穫開始できそうやが。
この2番手くんがな、ちょっと個性的な品種でな、ブロッコリー最大の敵である根こぶ病に強くて、根ががいに張る。その割に茎葉はそんなに大きうならん。実に管理のしやすい品種やな。ところが収穫の段になってちょっと難点があって、花蕾にデコボコができやすいんやが。デコボコのなにが困るか。見栄えが悪いきん等級が落ちる。それはまだええんやけど、デコボコのボコのところにな、雨水が溜まって花蕾腐敗病という病気を招きやすいんやが。ほんの一部でもこの病気になるともう出荷できんようになる。例えばこんなん。
くぼんだところに水がたまってな、そこが黒く腐ってしもうたんが分かるやろか。状態によっては病気が中のほうまで進んでしまうこともある。
花蕾はブロッコリーにとって子孫を残すための大事な器官やきん、普通は水を弾く薄いワックスブルームに覆われとる。水にべったり濡れて腐ったら花を咲かせることができんきんな。でも窪んどったらしゃあないわな。
ところでなんやけど、この前の清浄野菜の話をTwitterに振ったら、中性洗剤の話を教えてもろた。戦後すぐの第一次清浄野菜の時代には、寄生虫を防ぐために中性洗剤で野菜を洗うのが普通のことやったんやって。そこで、はて、中性洗剤とはなんぞやと思って調べてみたら、詳しく載ってるサイトがあった(参照)。これも台所洗剤の文化史やなあ。
最近は洗剤で野菜を洗うことはあんまりないと思うんやけど、農薬を落とすための中性洗剤というのがあるんやな。エコなお店とかで売っとるそうや。以前そういう商品のサイトを見ていたらブロッコリーの農薬について変なこと書いてたのを思い出したきん、ちょっと検索してみたらわざわざ動画でおかしなことを言いよるのを見つけてしもうた。
野菜用洗剤でブロッコリーを洗って、採れた白いワックスブルームを「これが、農薬(キリッ」「恐ろし~」ってやってるよ。ちょっとちょっと嘘はやめてつかよ。それは表面のワックスやが。
だいたいブロッコリー栽培においてはやな、無農薬栽培はもちろんのこと、農薬を散布する慣行栽培でも、プロは一般に花蕾が出た後は農薬を散布しないんよ。農薬登録上は使用できる農薬はあるんやけどな。ほんだらなんでせんか。
まずはブロッコリーの農薬散布について説明するわな。ブロッコリーとかキャベツみたいなアブラナ科は花蕾だけでなく葉も水を弾きやすい。そやきん、農薬散布の際には展着剤を添加するのが必須や。そうせんと、一番上の雨後のブロッコリーの写真みたいに、つんつるてんと、薬液を弾いてしまうきんな。展着剤を入れて葉やそこにおる害虫にしっかり農薬を付着させてやらんと、病気の菌や虫をシバキ上げたりそれらから葉を守る効果が得られんきんな。効果が薄かったらもっとようけ農薬を散布せないかんようになる。
一般的な安価な展着剤(うちで普段使いよるこれとか)はようするに界面活性剤なんよ。界面活性剤って表面張力を下げて表面を濡らしてくれるやろ?そうやって薬液を付着させるんやが。ところがやが、これが花蕾についたらどうなるか。その後の雨や夜露で花蕾がべったり濡れてしまうでないかー。これでは花蕾腐敗病になりやすくなるし、出荷後の店持ちも悪くなってしまう。見た目も、展着剤を含む薬液がついたところだけ色が変わってへんてこになる。そやきん、花蕾がまだ小さくて葉にすっぽり覆われているうちに農薬散布を終了するのが基本なんやが。
では界面活性剤がべったり花蕾につくとどうなるかを見てみましょう。さっきの動画の業者さんがもう一本ブロッコリーの洗浄実験動画をアップしとる。
これの1分50秒から。洗剤(これも展着剤と同じ界面活性剤だそうなんやが)で洗うたブロッコリーと洗うてないブロッコリーに水をかけて実験してくれとる。洗うてないぶんは水を弾くけど、洗うてワックスブルームを落としてしもうたぶんは水を弾かずに花蕾の中に吸いまくっりょる。農家にとってはガクガクブルブルの映像やが。もっとも、展着剤は5000倍とかに希釈して使うきんここまでにはならんと思うけど。
というわけでやな、農薬に不安な人もそうでない人も、とりあえずブロッコリーの食べる部分にはまず農薬は付いとらんきん、それだけは知っといて欲しいんやが。
Posted by kazuzo at 20:06│Comments(0)
│野菜