2012年04月13日

耕す者への祈り

 はーるだーいこーん!
耕す者への祈り

 ウチのオヤジが寒さをしのぐトンネル張って作りました。農大の1年コースをなぜか2年間通って作った集大成。言わば卒業制作。どうも座学はサボりがちのようやけど、畝立てるのとマルチやトンネル張るのはほんまうまくなったきんなー。わし、教えてもらいよる。春大根やきんちょっと辛いけど、みずみずしくておいしいよ。

 根菜は抜いてみな分からんきん、おもっしょい。奇形作物の話でも書いたけどな。未熟堆肥や石なんかの障害物があるとするっと避けたり、じゃあなとばかり二股に分かれて伸びる。植える前にやれることやったらあとは土の中でなにしよるのかは分からん。オヤジの作った大根みたいに短足ながらも太ましく伸びよるかもしらんし、ひょっとしたら虫の幼虫や線虫が食いよるかもしれん。

 土はおもっしょいな。ドキドキするな。ワクテカするな。ところがどいや、一年とちょっと前、福島県で原発からセシウム134とセシウム137というやっかいなもんが(ヨウ素は半減期8日やし他の放射性物質はちょう微量やきん略すわな)ぶわっと出て近隣の畑の土に降り注いだ。福島県や、近隣の県、あるいはホットスポットと呼ばれる場所で採れた作物はケガレたものとして忌避されるようになってしもうた。基準値とかシーベルト換算した内部被曝の程度とか関係なし。最初に困ったのは有機農法の百姓やった。なぜなら彼らのお客さんはそもそも農薬みたいな「自然じゃない」もんが嫌い。量とか関係なしに嫌い。どうやら農薬もケガレらしい。野菜にそもそもどれだけのアレルゲンが入ってるかもしらんと、な。原発から遠く離れた神奈川県ですら有機農法の百姓は苦境に立たされたという(参照)。まあキツいこというとそういうお客さんを育てたんは誰かいなと言いたくなる場合もあるんやけど、同じ百姓として同業者がえらい目しよんを見るのはつらい。

 そのうち作物だけでなくて福島県の百姓そのものをあしざまに罵る連中が現れた。中心になったのは大学の先生というのがまあびっくり。取り巻きたちも尻馬に乗って福島県の百姓の悪口をパソコンに向かって書き連ねた。しまいには百姓一般についてひとくくりに罵り始めた。曰く「出荷用は農薬まみれ、自家用は別に無農薬で作ってる」「普通の農家は収入のほとんどが補助金」。そういう発言がどんどん街の人たちによって拡散されていった。わしも反論したけど、届かないよね。

 一般的に自分の職業以外のことはみんな知らんもんで、誰か声の大きい人がバッシングを始めると乗っかってしたり顔でいかがなものかと言い出す人は多い。どっかの街のバスの運転手とかがいに言われたな。わしもそんなことしたことあるかもしらん。まあそんなもんと言われればそんなもんだよね。でも、福島県やその近隣でえらい目に遭うとる百姓たちの傷に塩を塗るんはどうなんかいな。悪いのは東電や!そうやな。でもそれとあんたの口の悪いんは関係ないで。
 
 そんなえらい目に遭っても東のほうの百姓たちは負けないと思う。ホットスポットと呼ばれる柏市の都市近郊農業は生産者と消費者が一緒になって「測る」ことで信頼関係を取り戻そうとしよる(参照)。これの詳しい記事をシノドスのメールマガジンで読んだんやけど、わしは直売農家として、地域の若いもんとしてちょっと感動してしもうた。あるいはJGAPみたいな作業規範(農業版ISOなんたらかんたらみたいなん)を定める団体が積極的に放射性物質対策を打ち出しとる。きっと東日本では今からJGAPやあるいは夢は大きくグローバルGAPの認証がどんどん増えてくると思う。なんとて信頼を取り戻さないかん。しかし「有機」とか「自然」の看板で得られるそれは幻想と分かってしもうたわけやきんな。

 西日本はどうやろうか。今まで通りの幻想の安心が今以上に蔓延するような気がするんやが。西日本産はなんとなく安心ムードやろ。そして安全な場所から、東は危険や汚れとるとわいわい大きな声で言う人がまたおる。主にナチュラルな仕事の人たち。それは、例えば東日本から避難してきた人のことを思って言よるんかもしらんけど、一時の心の安寧は提供できても根本的になんの解決にもならん。新たなケガレと差別を生むだけや。それに東日本の同じような仕事の人達がどんな目に遭ったのかしらんのやろうか。まあ過激な人の中には日本中が汚染されたよ~って泣く人もおるけどなー。節子、それ汚染ちゃう、ただのケガレ意識やきん。

 わしはもっともっとみんなに土やそれをたがやす人たちのことを知ってもらいたい。GAP規範のことももうちょっと勉強したいと思うけど(以前図書館で本借りてきてちょろっとだけ読んだ)、まずはわしのやり方で始めようと思う。百姓に対する変な幻想も誤解ももうコリゴリや。そういうのを打ち壊すために百姓の姿をおっぴろげにすることが東の百姓の援護射撃にならんかと思っとる。そんなわけで、例の地図、プロフィール覧から飛べるようにしといたきんな。それとリアルタイムでどんどん作業を入力していくきん、時間があるときにでもよかったら見てつかよ。


 タイトルはチリの歌手、ビクトル・ハラの歌からもろた。


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